彫刻家の娘(初訳版) トーベ・ヤンソン 

トーベ・ヤンソンの作品に初めて接したきっかけは、
「彫刻家の娘」だった、と思います。 
14才の時に読んだのですが、(すっごい、昔・・・)

大人向けにトーベはこの本を執筆していますから
その年代では、そううまく理解できない。

トンボの飛びまわる原っぱと、松林があちこちに
点在していた時代でした。

まだ自然がかなり残っていた海っぺりで、
私はワイルド(野放し)に育ったんだけど、
それ以上に手つかずの、北欧の自然の話に、
惹かれたんでしょうね。

描かれている自然と
風変わりな登場人物たちに。


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1973年の初訳で

自然がワイルドといっても、
本をつらぬくトーンは、むしろ静かで、幻想的。
ロウソクの煌めき、光り輝く闇のような敬虔さが行き渡っているのは、
訳者の香山 彬子(かやま あきこ)さんの尽力によるものでしょう。
 

表紙はスウェーデン語版で最初に出版された装丁。

トーベはこの装丁が一番好きだったようで、

「・・・これは、私の上の弟のペル・ウーロフが撮ったパパのアトリエの写真よ、そして、この女の子は彼の娘なの。この装丁こそ、この本の内容にぴったりでしょう?!ね、そう思うでしょう。」

といったトーベと訳者との会話や、島でのトーベの様子が描かれた「あとがき」も今となって読み返すと興味深いもの。

 
新しい版は、装丁と訳者の方が違うのですが、
こちらはまだ読んだことがないです。

この旧版なんて、200円、、っていう、
まだまだ本が偉大な娯楽であり、楽しみであった時代。

小さな文庫本なのに、一度出会ったら
忘れられないような一冊の本でした。


彫刻家の娘

彫刻家の娘