ハル、孤独の島 トーベ・ヤンソン [DVD]

最初の銀座での「トーベ・ヤンソン生誕100年記念展」で、このDVDを買ってしまった。

その当時の実際の映像を見られるのが、このフィルムしかないのだから、やはり見てみたい。(確かに値段は高いのですが。)

今でもクルーブ島に小屋は残っているけれど、潮風でいたみが出て修復されるうちに、少しずつ変わっているだろうし、小屋の周辺に生えている植物なども当時と変わっているかもしれない。

それに、なにより「嵐」、
トーベの大好きな「嵐」を見れたらいいと思った。


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古いレコードのような映像

トーベが最も愛した場所は、ペッリンゲ島をはじめとした島々だった。

ブレド岩礁やクルーヴ島で毎年長く過ごし、多くの作品や小説の舞台にもなっている。

トーベは、フィンランドの中でスウェーデン語を話す少数派で、その多くの人々は海に近いところや群島に住んでいた。
  

古いコニカの8mmを編集した作品だから、フィルムにはキズがたくさん入っているし、色もあせてくる。

それなのに、デジタル映像にはない、柔らかく呼吸しているような、古いレコードをターンテーブルに乗せるような楽しみがある。


島、ボート(ヴィクトリア)、航路標識、石、雲、くろい猫のプシプシーナ、
ダンス、植物、花。

手触りが伝わってきそうな小屋の木材、
真鍮の取手、カモメ、貝、波、魚とりの網。

さすがに、ビューフォート7級のような嵐は映ってないけど
強い北風に打ちつけられる波...


映像の中の一番若いトーベは57才、最後の映像は77才。

ダンスするトーベの年齢を考えると、もともと運動神経のいい、体のよく動く、すばしこい生き物のような人だったのかなあ、と思う。

嵐が強くても島へ行きたい時には、海上保安庁の船に乗って、クルーヴハル島の近くまで行き、船が充分に島に近づくと、トーべは服を着たまま海に飛び込み、島まで泳いだのだという。

どっしり、確実なトーティはかなり大柄な人のように見える。
ふたりとも職人的に器用だったのだろう。
 
トーベの絵画や作品と、自然の中で鍛えられたトーベの運動能力とか運動神経とのかかわりは、かなりあると思う。
誰か研究してくれたら面白いのだけど。 


霧が出る、タバコ、お茶、ラジオ、花のサンフランシスコ、
波の音、ヘリコプター、嵐、
ボートから水をかき出すトーベ、雨、虹 ...


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このDVDは、1972年 ~1991年まで
トーベとトゥーリッキが、電気も水道もない小さな島、クルーヴハルで過ごしていた様子を8mmコニカで撮影した、プライベートフィルムを編集したもの。 

トーベが踊る場面では、本人がぜひ「花のサンフランシスコ」をお願い、とリクエストした。

ナレーションはトーベ自身がすでに病に臥せりがちになっていた時期で、トーベが選んだ女優が朗読している。


内容は40分ほど。何かを解説する必要もない、
一枚のレコードを聴くように、ただゆっくりフィルムを楽しめばいい作品。




 
孤独は最高の贅沢だ。

「いまのわたしになにかおすすめできることがあるとしたら、それは住所のない島にすむことです。トロールくらいなら棲んでいてもいい、うんと小さなトロールならばね」(1985年トーヴェ・ヤンソン 『ユリイカ』より)


ハル、孤独の島 [DVD]

ハル、孤独の島 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 2014/02/05
  • メディア: DVD