生誕100周年 トーベ・ヤンソン展
展示されていたトーベのパレット。
裏側はどうなってるんだろうと、のぞきこんでみたら、
裏側の半分ほどに、もう一枚板が貼ってあって、Tuulikki (トゥーリッキ)の署名が入っていた。
のびのびとした大きなパレット。
トゥーリッキの父は木組み職人だったから、やっぱり木に慣れ親しんでいたのか、制作のパレットも曲線がなめらかで、仕上げがとても見事。
「わたしは彫刻家の娘だが、トゥーティのパパは木組み職人だった。そのせいで彼女は、ずっしりと立派な厚板をさばくにしろ、羽根のように薄いバルサ材と戯れるにしろ、木材をあつかう作業を好む。」(『島暮らしの記録』より)
絵の具を置く順番も、
きっちり決まっていたような感じで
絵の具が残っている。
パレット上で絵の具を混ぜている。
ふつう、油絵の具はへたに混ぜると色が濁ってしまう。
たぶん、北欧の高緯度でさし込む光は、チューブから出した色そのままでは表せないから、パレット上で混ぜるし、画面の色も、むしろ抑制されたというか、それでいて、完璧な調和感がある。
トーベの師であるサム・ヴァンニの油彩作品には、背景の部分に、絵の具をキャンバス上でかき回してしまって濁ってしまったところがある。
こうなると、油絵の具は、どうにもならない。
トーベの作品には、そういった所がほとんどない。
あくまで線のつみかさね(線=自然界のライン)で描かれる。
タッチとも呼べる感覚的な部分だと思う。
デッサンも、バランスの取れた軽い階調というか、
明らかにもう10代半ばから腕のいいプロだったことを思わせる。
スポーツでいえば、10代からプロサーキットを回っていたような人だ。
そして、
やはり「線」の人だと、思う。