『ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン 』 *トゥーラ・カルヤライネン

トーベ・ヤンソンについて、人と作品の全体像を知りたいけれど、出版されている2冊の伝記とも、分厚くて値段もけっこうします。
どちらにするか、迷っている方も多いかもしれません。

この2冊のうち、「ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン」をまず読んでみました。

私は、銀座で開催された「生誕100年記念 MOOMIN!ムーミン展」の会場で手にして、やはり読んでみたいと思っていたら、ちょうど誕生日でもあったので友人がプレゼントしてくれたのです。 


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読みやすいレイアウト

サイズは一般的な単行本と同じです。
376ページの分厚い本ですが、イラストや油彩、水彩などの作品、写真がオールカラー印刷でたくさん入って、紙質が良いため、ページ数の割に厚くなっています。
 
文章は二段で、作品や写真との配置バランス、印刷の色味もきれいでよくまとまっています。ムダのない簡潔な文章で読みやすく、本の厚みほど文章量は多くないと思います。

ひとつひとつの章を読み進めるのが楽しみで、読み終えるのがもったいない感じでした。トーベヤンソンのことを、あまり知らないけれど、全体像を知りたいという方には、おすすめしたい一冊です。


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「トーベ・ヤンソン展」のキュレーターの視線

「作品をできる限りトーベ自身に近いところ、つまり彼女が生きてきた社会や、仲間たちの位置から確かめてみたい」と考え、この本を書いた、と著者は序章に記しています。

豊富なイラストや、写真、油彩や絵本作品のカラー印刷が、たくさんちりばめられているのが、この本の特徴です。それで、作品を通して、トーベの姿を描き出していく内容が、とても分かりやすいのです。

ふと思ったのですが、展覧会を見に行って、会場の全体のようすを眺める感じに似ています。全部で12章ありますが、ちょうど12の部屋があって、そのひとつひとつを廻って歩いていくような感じ。

全体像やつながりは、適度な距離を置いた場所から見渡したほうが、分かりやすいものです。全体を眺めながら、同時にひとつひとつの作品も、ゆっくり歩きながら見ていかれるような本です。

それは、著者が美術館のもと館長であり、展覧会のキュレーターである視線とも、似ているのかもしれません。


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翻訳はたいへんな作業

著者は、「トーベ・ヤンソン生誕100周年展」の目録を作るために、トーベの姪であるソフィア・ヤンソンから、トーベのアトリエの鍵を借りて、4ヶ月間アトリエにこもり、持ち出し禁止の資料、手紙を読み続け、またトーベの弟のペル・ウーロフと何年も話し、彼が本のために資料の中から写真を探してくれたりしたそうです。

また日本語への翻訳というのも、大変な労力のかかる仕事のようで、翻訳会社の担当者と膨大なメールやりとりを重ね、プロの校正・編集の方の徹底した下調べなど、目に見えない多くの人の協力と尽力で送り出されるものなのですね。


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アテネウム美術館




著者のトゥーラ・カルヤライネン

ヘルシンキのアテネウム美術館で2014年に開催された、「トーベ・ヤンソン生誕100周年展」のキュレーターを務めています。
日本各地で現在開催されているのは、この展覧会をアレンジしたものです。

キュレーター ・・欧米の美術館では、作品収集や展覧会の企画という中心的な仕事をする専門職。 


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Tuula Karjalainen

実はこの本の原書は2013年に刊行されていて、生誕100周年用として出版されたのは偶然であり、驚きだったそう。

以前からトーベ・ヤンソンの研究にのめり込んで書き上げ、フィンランド人の著者による評伝が初めてだったこと、また記念展のキュレーターであること、内容の高い評価などで、国内外で大きな反響を呼び、フィンランド語の優れたノンフィクション作品に贈られる、ラウリ・ヤンッティ賞を受賞しています。


ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン

ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン

  • 作者: トゥーラカルヤライネン,セルボ貴子,五十嵐淳
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2014/09/25
 

★もう一冊の伝記本はこちら
merimaa88-tove.hateblo.jp