生誕100周年 トーベ・ヤンソン展 〜画面の向こう側に

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3回通ったトーベ・ヤンソン展

トーベの展覧会には、3回足を運びました。

たぶん、ファンの中には10回見に行ったとか、毎日行ったという人もいるんじゃないか?と思いますが。

3回見に行って、やっと色々見えてくる感じです。

私は、14才ぐらいの時、遊びでペンギンブックスのトーベのイラストを、ペンとインクで真似して描いていました。その後は美大を選びました。一般課程の大学では、とても自分はやっていけないと思ったのです。
 
トーベは15才で学校を自主退学しました。子ども時代のトーベは学校が嫌いだったし、家族のために芸術家になろうと決断する、若き仕事人でもありました。

トーベのパートナーであるトゥーリッキ・ピエティラも、16才で学業を終えたあと、奨学金を得て、フィンランドのトゥルクから、ヘルシンキ、ストックホルム、パリ、さらにはノルウェイ、デンマーク、イギリス、南フランス、スペイン、イタリア・・・!!

ヨーロッパ各地の美術学校を渡り歩いて、絵画、彫刻、版画の技術を学んでいます。


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早熟であることは必要だと思う

日本のアート環境とくらべると、愕然とします。

たぶん、人生で最も集中力や好奇心がある15才頃というのは、本能的に教室に閉じ込められたくない。

その時期に、自由であり、やりたい世界に入っていけるのは、実はとても重要なのだろうと思います。

スウェーデンのアバのアグネッタも、17才でレコーディングしています。

ノルウェーの画家、エドヴァルド・ムンクも17才で学校をやめてしまった。

ここでの、のびしろは本当に大きい・・.

(このことは、また後日に)




トーベの世界一美しい線を発見

展覧会場に入ってすぐに、トーベの子供時代の絵や16才頃の絵がありました。

もう10代には、特有の美しい線は現れていました。

ひと言でいえば、早熟の天才肌なのでしょう。16、7才頃の絵に、すでに美しい線がある。

木の枝や、波、入り江、トーベが自然のなかで、小さい頃から日常的に見ていた線ですよね。しかも、その自然は手つかずで、とんでもなくワイルド。

トーベはある手紙に書いています。

「父は悲観的な人でした。でも、嵐が近づくと、まるで別人のようになるのです。明るくて面白くて、好奇旺盛。子どもたちを連れて、危険な冒険に出かけるの。嵐、水位の上昇、悪天候、撃破したり戦ったり・・・」
 
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”Narsissiasetelma” (A composition of daffo­ dils). 1943. Oil on canvas.   

アートや絵について、昔から持ってた色々な疑問に答えてくれた展覧会でした。

そして、数十年来の「なぞ」の答えを見つけました。

要するに、トーベの絵の中に「自然」以外の線はないんです。

それも、ごく早い時期に身につけていた。

身の回りの手つかずの自然の、木や枝、波、嵐、雪、月明かり、などのラインが、そのままトーベの描く線になっていったことは、想像がつきます。

あまりにも、当たり前すぎる答えでしょうか・・・?

油彩も色を塗るというよりも、美しい線の積み重ねで描かれています。

油彩の作品群は、遠くから見ても、近くから見ても、何が描いてあるか以前に、見えてくるのは美しいライン=自然です。


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♪Be Sure to Wear Flowers In Your Hair 〜
Scott McKenzie 「 San Francisco」  

私もワイルドな自然が残った海辺で、放ったらかしに、ほんと放ったらかしに育ったので、松林や、海岸、そこに集まる生物、風が枝を鳴らす音、海鳴りの音、先生はまさに自然そのものでした。 

その自然が身の回りで、無惨な扱いを受けるのが日本。

この展覧会の時も、海岸近くの松林が大手不動産会社に根こそぎにされました。

大手であろうと何だろうと、テロ行為にも等しいような、知性のカケラも感じないようなやり方です。

北欧と文化の質とレベルの差を、まざまざと感じたし、トーベの絵を会場で見ているうちに、何て暖かい生き生きとした自然が、そこにあるのだろうと思いました。

上映されてるDVDから、「花のサンフランシスコ 」が、流れてきたとき、いつも島で太陽が照り、風が吹いているような画面からトーベが手を振っているようで、手つかずの自然がオーバーラップして泣けてきましたね。

画面の向こう側で生きたほうが、もはや幸せなのでしょうか。


merimaa88-tove.hateblo.jp

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