ムーミンはなぜ日本で人気なの? インタビュー記事

本国トップが明かす10年で売上高6倍の“裏事情”

 ロレフ・クラクストロム(ムーミンキャラクターズ)インタビュー
 (週刊ダイヤモンドから)

なぜ日本女子は北欧好きなのか

日本を”捨てた”ムーミンの復活劇  


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なぜ、ムーミンは日本で一番人気なの?

フィンランドのヘルシンキに本社のあるムーミン・キャラクターズ社。
トーベの姪であるソフィア・ヤンソンが、クリエイティブディレクターと会長をつとめ、北欧のキャラクター「ムーミン」を管理している。

インタビューに答えてくれたのは、ソフィア・ヤンソンの夫であり、マネジングディレクターのクラクストロムさん。

現在、ムーミンキャラクターズ社の売り上げは、この10年で6倍近くに上がり(約5億ユーロ)、その4割以上が日本だという。

しかし、ここまで売り上げが伸びる背景には、驚くような決断と、復活劇があったのだ。



「ムーミンは「アート」としても通じる希有な存在

「10年前まで、われわれは過去の作品に依存し過ぎていました。この構造を変えるため、2008年に痛みを伴う改革をしたのです。」と、クラクストロムさんは言う。

それは、日本の根強いムーミンファンをいったん”捨てる”という選択だった。

日本のムーミンファンは1969〜72年のテレビアニメと、その後の91年のアニメで増加していった。

しかし、過去のアニメの再放送などに依存して新たなファンが開拓できず、日本での人気は世界シェアの30%を切るなど、目に見えて落ち始めたという。

またソフィア・ヤンソンが「トーベが描いたものでないムーミン」が出回ることを悲しんでいたこともあり、「経営のコアをトーベのアートに絞る」という決断をしたのだ。

この決断は。各国のムーミン関係者に大きな打撃を与えた。

日本では根強いファンのいるムーミンアニメのイラスト(日本でローカライズされたムーミン)が、商品に利用できなくなることを意味していた。そのことへの抵抗も大きかったという。

しかし、それは「ムーミンキャラクターズ社の確実な戦略」でもあった。
ムーミンは数あるキャラクターの中で「アート」としても通じる希有な存在ということを前面に押し出したのだ。


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日本での人気が復活したのはなぜ?

トーベ・ヤンソンは、画家であり、作家であり、多岐に渡って制作を続けた芸術家。
ムーミンの誕生自体が、第2次大戦の経験の影響を受けているし、生涯を通しての自然との深いつながりなど、ムーミンは、単なる子供向けのキャラクターにはない世界観を持っている。

「アートを中心にしたことで展示会にたくさんの記者がおとずれ、映画監督なども関心を持ってくれるようになりました。だから今は広告も打っていません。」

広告費が減った一方で、売り上げはこの10年で6倍近くに伸びた。

「正直なところ、日本で人気が再燃したのは驚きでした」とクラクストロムさんは語る。

日本での人気が復活した理由として、自然を愛する日本とフィンランドの類似性、米国と異なる独自の北欧の生活スタイルが注目されたこと、もう一つは、やはり昭和のアニメの力を挙げている。
 
インタビューの最後に、「日本は、素晴らしいモノが作れるのに、物を輸出していくのが、すごくすごく苦手なのは知っています。・・」とクラクストロムさんは語った。 


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「冬の夜に技術者たちは家にこもる。そうした厳しい環境から、家の中でも楽しめるゲームや物語、デザインが生まれてきた。」  
 
家具のイケア、ファッションのH&M、玩具のレゴ、ノキア、スカイプ、音楽配信のスポティファイ、エリクソン・・・

続々と生まれる技術やアイデアのキーとなるのは、北欧の長く寒い冬。
ムダを極限までそぎ落とし、世界中の誰もが楽しめるシンプルなデザインは、厳しい自然環境の下で編み出されてきた。


クラクストロムさんが、インタビュー最後に語った言葉が、印象的。
昭和のムーミンアニメの時代から、アートを中心とした現在に至るまで、日本は受け手として、与えられたものを買うことには、たいへん優秀で熱心な? 国民性なのでしょうか。

そして「物を輸出していくのが苦手」以前に、輸出するコンテンツを生み出すための環境が、あまりにも粗末で欠落しているように思えてしまうのです。

自然を愛する日本とフィンランドに類似性がある、ムダを削ぎ落としたデザインが日本人の感性に合う・・と言いつつも、実際には北欧の生活スタイルに憧れるだけで、暮らしに根付いていくことがないのが不思議です。


週刊ダイヤモンド 2015年 3/14号 「雑誌]

週刊ダイヤモンド 2015年 3/14号 「雑誌]